情景(秋)
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)澱《にご》った

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)チェックの|アンサンブル《ポタージュをのんでいる》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#丸ス、1−12−71]
−−

     秋の景色(十一月初旬)

○曇り日 日曜。ちっとも風がない。
  ○すっかり黄色くなった梧桐の葉、
  ○その落葉のひっかかっている槇の木の枝
  ○きのうの雨でまだしめっぽく黒く見えている庭木の幹。
 離れの方から マンドリンとピアノの合奏がきこえて来る。
◎ひどく雨が降っている。
[#ここから1字下げ]
 ○遠くの方で、屋根越しに松の梢がまばらに大きく左右へはり出した枝を ゆすっているのが雨中に見える。
 ○柿の木がすっかり葉をおとし、いくつかの熟した実を盛に雨にうたれている。
[#ここで字下げ終わり]
◎バスにのって戸塚の方へ出たら雨がザーザーふっている。バスの前方のガラスを流れている。
 
次へ
全7ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング