降りる頃には またやんでしまっていた。
◎芝居のかえり。初日で十二時になる(群盗。)アンキーとかいう喫茶。バーの女給。よたもん。
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茶色の柔い皮のブラウズ。鼠色のスーとしたズボン。クラバットがわりのマッフラーを襟の間に入れてしまっている。やせぎすの浅黒い顔、きっちりとしてかりこんだ髪。つれの女の子、チェックの|アンサンブル《ポタージュをのんでいる》(赤、緑、黒的)黒いハンドバッグと手袋とをその男がもってやっている。このよた[#「よた」に傍点]、ちっとも笑顔をせず。
「あっちへつけときましたから」
「おつけになって下さいましたの?」
「ええ」
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〔欄外に〕
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バアの女給。十二時頃 tea Room でポタージュをたべ トウストをたべる。ヴィンナ、トウストマダムという女 朱 赤と薄クリームの肩ぬき的な洋装、小柄二十四五位
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夕方五時すぎ。
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電車道のところを見るとさほどでもないが濠の側を見ると、濃くもやが立ちこめて四谷見附に入る堤が ぼんやりかすんで見える。電《街》燈はそれ
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