な 庭のしめり。
○西日のよくあたる梢の上かわだけ紅葉しているもみじ。
○すっかり黄色い七分どおり落ちた梧桐、
○銀杏の葉のふきだまりが土蔵の横に出来ている。
○便所にいる。
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ギャーギャーとまるで お上でものをいうのとはちがった声色で ふざけ笑っている女のこえ。
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午後
サイレンはついききおとしたが 方々の寺で鐘がなり、それに合わせるように 裏通りで 豆腐屋のラッパがしきりに鳴る、そういうあたりの活気をひろ子は 物珍しく感じた。
頭をあげて そとを見た。
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曇った日
となりで
アアちゃん
という声、シャラシャラおまつりのたすきに鳴るような鈴の音がしている。
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或女の人相
そのひとはどこが変っているというのではないが 目玉が丸く黒くなったようで 瞼の間にある艷やかさが ぬけてしまっている。寂しく不安なような表情、紅がついている小さい口がよく動き たっぷりした頬に白粉があるだけ却って。
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
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