ような社会生活を共同のものとして感じる心の肌理《きめ》のつんだ表現としての短篇小説が期待されるようになったのである。
 文学の文学らしさを求めるこの郷愁《ノスタルジア》は、素材主義的な長篇に対置した希望で短篇小説に眼を向けさせ、岡田三郎の伸六という帰還兵を主人公とする連作短篇なども現れた。また十四年度に著しい現象とされた婦人作家の作品への好意と興味とも、一面ではそこに繋ったものであった。
 今は純文学が文学の文学らしい形象性を意味するものとして云われるようになったのであるが、それが長篇に対する短篇という形式によってとりあげられたところに、やはりもう一度考慮を深められるべき要素が潜められていたと思う。何故ならば、より純な文学の心情に立つ方法として拠りたたれた短篇の多くは、やはり以前の伝統の糸の力に少なからずその作品の世界をひき戻される現実となった。やはり身辺的な作品、境地的な作品が多く、その意味で文学の本質が心情的に分っている作家が、この三四年間の波瀾をとおして、現実把握の方法を長足に社会的方向へ発展させたとも思われない状態であった。
 文学へ新人の爽やかな跫音を、と求める気分は濃厚とな
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