通りに、作者の根強い常識によって人間性の把握はどたんばで通俗に落ちこんでいるのが特徴である。
尾崎士郎の「人生劇場」がこの作者としてのある達成を示しつつ作品にもられている人間情感の性質に於ては古い日本の人情の世界に止まっていることも思いあわされる。高見順と共に新人として登場した丹羽文雄の作品などもその世界に生きる人間群の現実的な生活のモティーヴだの動向だのという面からの観察は研ぎ込まれていず、人物の自然発生な方向と調子に従って、ひたすらその路一筋を辿りつめる肉体と精神の動きが跡づけられている。傍目もふらぬそれぞれの人間と事象との在りようを、作者がまた傍目もふらず跟《つ》いて行く、その熱中の後姿に、文学に於ける人間再生の熱意、ヒューメンなものが認められるという工合でもあった。
知性の作家と呼ばれた阿部知二がこの時期に発表した「冬の宿」も、この点でいかにも時代的な所産であった。作品の中で人間性の濃度を高めるためにこの作者は意企的に異常性格を持った嘉門とその妻松子、娘息子をとり来って、殆どグロテスクな転落の絵図をくりひろげたが、この作品の世界に対して作者は責任を感じていず、登場している私
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