小鳥の如き我は
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)乾坤《けんこん》

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(例)住家に□[#「□」に「(一字不明)」の注記]どる。
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 枯草のひしめき合うこの高原に次第次第に落ちかかる大火輪のとどろきはまことにおかすべからざるみ力と威厳をもって居る。
 燃えにもえ輝きに輝いた大火輪はその威と美とに世のすべてのものをおおいながらしずしずと凱歌を奏しながらこの高原の絶端に向って下る。
 山も――川も――野も――、そうして私まで、
 世は黄金で包まれた。
 雲は紫に赤にみどりにその帳をかかげて乾坤《けんこん》の間に高笑いする大火輪を見守った。
 天もやがてはその火輪に下って来られる也土も皆驚異の目を見はって大きく生れて小さく育ち大きくなっていずこにかもり行く輝きのたまを見た。
 金の衣を着、黄金の沓をはいて私はその中をたどった。
 私の髪は聖者の様に純白に光り目は澄んで居る。
 手には小笛を握って居る。
 「偉大なる汝《ナレ》大火輪
 笑いつつ嘲笑いつつ我に黙せよと汝《ナレ》は叫ぶ
 黙さんか我
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