、――我は黙さんか――
偉大なる大火輪は叫ぶ
我に黙せよと、――
我に霊あり 偉大なり崇厳なり穏《おだや》かなり
我に生ありてその日その日を燃えつつ暮す
何ぞ黙せん、――何ぞ黙せん
偉大なる大火輪!
汝の如く我に霊あり希望あり而して汝の如く燃ゆ
汝の如く、我は偉大なり! 偉大ならんとす
汝の如く自然物なり! 自然物ならんとす、
何ぞ黙せん! 叫ばんうたわん汝《ナレ》と共に
けんこんの間に幽冥の間に!
汝偉大なる大火輪よ! 共にうたわん
思いあがった大火輪の自らの歌に声を合わす私に
「愚かなるものよ――黙せ――ひざまずき我を拝せ――愚なるものよ――」
と云うのを感じて斯う私は歌いつづけた。
ふみとどまり手を組んで眠りに入ろうとする大火輪を守る。
雲の色は一色になった灰色である。
四辺に満ちる声は一つになった歎いである。
私に守られつつ大火輪はしずかに眠りに入った。
草の葉は溜息をつき森の梢は身ぶるって夜の迫るのを待つ。
四辺には灰色と歎いと怨がみちて居る――
けれ共私は――
ひややかにがんこな夜はせまって宇宙は涙ぐむ――けれ共私は――
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