しを、天皇[#「天皇」に×傍点]制権力は昨今夢中になってやっている。記録的な分裂メーデーが今年行われた所以だが、企業内の大衆を現在の情勢ではただ上から[#「上から」に傍点]押えつけたのではもう通用しない。逆に闘争へ立たせるので、社会ファシストをつかって「左翼的」なかけ引きをさせ、大衆自身が内部的に統一されない気分を持つようにと悪辣な手段をつかっている。「党生活者」は敵階級のかような新手な戦術を暴露し、プロレタリアートの下からの統一戦線の重要性を示し、反動政策の新段階を暴露している。「党生活者」を読む場合、以上の点は見落としてならぬところである。
『読売新聞』で、杉山平助氏が「党生活者」第六部(五月号『中央公論』所載)を批評していたが、それは、この作品が五月号の部分では最も明瞭に且つ重点をそこにおいて企業内の反動政策との闘争について書いているのに肝心のそのところはちっとも理解せず、同志伊藤や笠原という婦人を書いたとこだけをとりあげ、同志小林が女に対して強権的ではなかったかなどと結果においてデマゴギー的なことを云っている。ブルジョア批評は、うるさく作品の詮議だてをして、うまいとかまずいとか
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