作品の上に起ったか。ブルジョア批評家がよく云うように、ただうまい[#「うまい」に傍点]、まずい[#「まずい」に傍点]の問題ではない。同志小林が前衛として益々全闘争の裡に深く入り、政治的に鍛練されることによって、これまでは謂わば外から描いていた積極的な主題を遂にその内側から書けるようになって来たことを示すものなのである。
「党生活者」は、真にボルシェヴィクらしい前衛作家によって前衛の生活がこまかく書かれた初めての作品として記念すべきばかりでない。
 軍需工場内で、労働強化に抗して起とうとする労働者を抑圧するために、天皇[#「天皇」に×傍点、伏字を起こした文字]制権力はどんな計画的な手段で反動的勢力を大衆自身の中から育て上げよう[#「反動的勢力を大衆自身の中から育て上げよう」に傍点]としているか、という最も緊急な今日の問題を同志小林はとりあげて我々に示している。労農大衆が勝つためには、下からの統一戦線が何より大事であることを大衆は自分たちの経験によって知りはじめた。ストライキでも小作争議でも分散的にせず同一の全産業、全部落が共通の要求によって結集して闘う方が有利であるとわかった。その切り崩
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