小説の読みどころ
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)ただうまい[#「うまい」に傍点]
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 同志小林多喜二がボルシェヴィキの作家として実に偉かったところは、うむことないその前進性である。一つ一つの作品が必ず、それぞれに階級闘争の発展してゆく段階を何かの形で反映している。
 われわれプロレタリア文学の仕事に従う者が、同志小林の業績によって深い鞭撻をうけるのは正にこの点である。彼が進み行く労農大衆の先頭に身を挺して立ち、その闘争の一部として小説を書きつづけて行った、この覚悟が同志小林を真のボルシェヴィク作家に鍛え上げ、作品をも益々大きいものにした。
「地区の人々」「転換時代」(この作品の本来の題は「党生活者」というのであるが、『中央公論』はおっかながって題をかえて発表した)について、われわれの学ぶところもそこであると思う。例えば、「地区の人々」をよんで、読者諸君はあの作品が従来の同志小林の作品に比べて、大変落付きがあり、文章にまでも大らかな確乎性が漲りはじめていることを感じたであろう。何故そういう変化が
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