小説の選を終えて
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三四年十月〕
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私のところへ送付された十数篇の応募原稿の中から、左の四篇を予選にのこして回覧した。予選には洩れたが、何かの意味で書き直したら作者の勉強になるだろうと考えられた作品にはそれぞれ寸評を加えて原稿を送りかえした。
今回は、大体に云って特にずばぬけた作品がなかったのは残念である。この次には大いに期待している。
「火葬場の下」 榎南謙一
特殊部落に恐るべき悪臭をふきつける火葬場移転要求をして、二年も闘っているところへ指導に行った若い全会の闘士と、それを支持する少年等、やがてその村をおそった嵐について書かれ、実感のこもった、描写もある。しかし、この部落の闘争の背景をなす大きい運動が感じられるように書かれていず、又はじめにいきなり葬式行列と死骸のやかれるひどい有様からかき起したのは構成の上で失敗である。全体の結構から云ってあすこは必要ない。それから、作者は「であろう」という文句を何か適当しない場所につかっている。そのた
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