に所有出来た家族は、何となく第三者の侵入を意識する。何となく拘泥する。
 私には、両方ながら自然に思われるけれども、実際の問題に当っては、非常に神経を使い、苦しまなければならないのである。
 特に、自分の場合では、お前が自分で引込んだものと云う心持が、暗々裡に彼等を暗くして居たのではあるまいか。女中の忙しさも、食事時の混雑も、要するに彼が殖えた為だと云う、uninvited guest の煩ささを彼女等の眉に読む。両方を愛す自分は、心の痛むのを感じる。夕飯の時、台所に出て女中を手伝い、
「御飯よ」
と云い乍ら皆を呼んで歩くことは、決して、先のように楽しい、活動的な悦楽ではなくなってしまったのである。
 母が、元、私に養子をする積りであったと云うことが、一方問題を一層混乱させた。
「C・O」と云う家族の姓名に、殆ど世間知らずに近い愛すべきグローリーを感じて居る彼女は、Aが、彼の名をすて、それに属すことによって、遙によい社会的地位を得、世間の人間の信用を増し、結局、私の為に幸福になると云われる。が、自分には、それがフェーアであると感じられない。自分は名が何であろうと、彼と云う人[#「人」に
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