発揮されていないというのが、去年あたりまでの座談会などでの感想だった。その現実から、年かさの女学生はまじめに社会生活を考えるひとほど、日本の民主化がこういう風では、女性として伸びてゆくさきがつまっているという実感をもってもいたのだった。結婚と仕事とは、女性の幸福にとって両立し得るものだろうかという疑問をもふくめて。
ここに集められた十七歳の世代の人たちの記録をみると、そんなところにも、何とも云えず生々とした変化がおこっているのを感じる。「一つの思い出」にワヤワヤと響いている声々のうちに「失われる緑」や、「春から夏へ」の、一人の少女が若い女性へとその蕾の勢で苞《ホウ》をやぶってゆく生活の記録のうちに、もう日本にも新鮮な小さい婦人たち――little women がのびつつあることを、ひしひしと感じさせる。彼女たちは、人間の小さい男が少年であることをあやしむものがないように、人間の小さい婦人としての少女の人生を、いっぱいに生き育とうとしている。共学は、いくらか神経質に互を眺めあう場合ではなくて、人間の小さい男と女とが集って一緒に学び、いろいろの研究や催しをもち、ときには競争しながら互にデ
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