。
[#ここで字下げ終わり]
やす子 (思わず)まあ!![#「!!」は横1文字、1−8−75]
良 三 (おっかぶせ)これからが聞きものなのさ。(文面)
[#ここから2字下げ]
勿論、今となりましては総て返らぬ繰言《くりごと》でございます。何ごとも定められた運命と思い諦めるより、致しかたはございません。
けれども、母の身となりましては、せめてこうなります前、一度でも、斯界の泰斗として衆望を聚《あつ》められる先生の霊腕に接し得なかったことのみが、かえすがえすも、心遺りに存ぜられます。
終りに先生の御健康を祈り、博大なる御心を以て、世の幾百の哀れなる幼児のために、御尽力あらんことを切望致します。
敬 白[#地より4字上げ]
柳田まさ子[#地より6字上げ]
中西良三先生
玉机下
[#ここで字下げ終わり]
良 三 どうだい?(やす子が涙を目一杯にしているのを見て、我知らず調子を変える)勿論僕だって、子供に死なれたことは幾重にも同情するさ。親の身になったら全く堪るまいからな、然し、自分の子供が死んだから
前へ
次へ
全20ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング