方、そうお思いなさらなくって? わざわざ貧民の子供なんかを集めて世話を焼きながら、御自分の子は、馬鹿みたいな雇人まかせで安心していらっしゃるなんて、私には到底分りませんわ。
良 三 (幸福を感じつつ揶揄《やゆ》する)それは、お前は偉いさ。何にしろ模範的賢母なんだからね、つや子がさぞ素晴らしいものになるだろうよ。
やす子 ……(微笑)
良 三 然し、また、柳田の奥さんみたいでも堪らないからな。いくら拘《かま》わないのがいけないからって、ああ子供と医者とで討死しちまうようじゃあ助からない。
やす子 (はっきりして、良人を見る)まあ、そんな?
良 三 一遍行って会って御覧、大抵の者はいい加減毒気を抜かれるよ。
やす子 (苦笑)……
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ところへ、書生、夕刊二枚許りと一緒に、三四通の手紙を持って来る。
[#ここで字下げ終わり]
書 生 これが参りました。
やす子 はい、どうも有難う。(一まとめにしてそれ等を良人に渡す。書生去る。良三、箸を持ったまま、先ず上の封書を開き黙読する)[#底本では、このト書きのみ2行目から天より4字下げ]
やす子 (静に鉄瓶から茶碗に湯を注《つ》ぐ
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