商売は道によってかしこし
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九四七年一月〕
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 商売は道によってかしこし。こういう言葉がある。さすが専門にそれを研究しているものは見事なものだ、という意味もいくらかふくまれているだろう。しかし、この言葉が云われるとき人々はその口辺に一寸薄笑いを浮べる。からくりはお手のものというわかり合いが互の間にとりかわされるのが普通だからである。
 小説のことに関して、こんな話し出しかたは奇妙のようにも見える。けれども、出版という企業がはっきり、利益を目当としたものとして行われている今日の社会では、出版企業につながる文学行動の一つのあらわれとしての小説にも、商売的いきさつは、かかわって来ざるを得ない。原稿が売れないで結構と考えている作家は一人もいない。買い手がなくても結構と云って書籍を出版し、雑誌の編集をしている人は一人もいない。その間に、競争がある。その競争に勝って一つでも一冊でも多く売れることが、利益を増すことであり、利益を増すような作家が要求されて来るのであ
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