努力の部分というのは、その中で多くの部分が予定されているのです。今日の実際の恋愛という風なものは、そう云うものだと思う。その点を何か勘違いしている場合が多いと思いますが、どうでしょう。経済的な目というものを、結婚や恋愛の場合女の側から男にだけ求めるものとして女に考えられている場合があるし、ひどいのになると、結婚は人生の事務であると云うような理屈づけで、恋愛の場合は男の人が、お茶代や映画を見物する費用、ハイキングに行くこと位出来れば辛棒しているが、結婚となるとすっかりその標準を高くし、どうせ結婚するなら生活の安定が無くちゃねえと云うようなことを当然と考えている人もなくはないらしい。
またね、さっきの女優さんのことになってお気毒ですが、ああいう一見無邪気に人を噴き出させるような表現の中に、なんという深い生活の垢みたいなものが満ちているでしょう。女優さんと云う職業の関係もあるかも知れないし、その場の空気で支配されたところもあるでしょうけれど、ああいう冷い固いその人のその芯を貫いているような人生態度は、一朝一夕のものでなくて、矢張り女が昔から金で支配され得るものであった社会関係をいまは女が自
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