むと思わず噴き出しますけれど、後で直ぐ何か厭やな気持がするのです。若い女の人が経済的な事情を抜きにして、恋愛を至上的なものに考えたり、そのように行動することそれ自身は悪いことでもなんでもないけれど、現実の今日の社会の中で、そう云う空想的な人間の結び付きは結局経済的なもので打毀《うちこわ》されたりするから、愛情のしっかりした成長のためには、その愛情が条件として持っている経済的条件をよく知って、建設的な方法を打ちたてて行かなくてはならないと云う意味でこそ、経済的な実際性が、女にも男にも求められるのです。金というものも現在では人間を支配するものとなっているから、金持ちの家庭ということは金を持っていることが善い悪いと云うのでなく、金を守らなくてはならない所からその家《うち》の人々の物の考え方も判断の仕方も行動の仕方も特徴がついてくる。それは避け難い現実ですからね。そう云う人間の生き方と、自分が求めている生き方とが、ぴったりするか、しないものかと云うところから選択の標準が出てくる訳です。
 女と男とがお互いに交渉を持ってましなものにして行こうとするものとして、経済問題が出て来る。女の人の負うべき
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