ているのでしょうね。昔ね、菊池寛が「真珠夫人」という小説を書いて金の為めに人身犠牲《ひとみごくう》のような結婚をさせられた人の悲劇を書いてたことがあります。親の借金のかたに金持ちに嫁にやられるということで考えれば、恐らく十人のうち九人までそれを女として耐え難いことだと思うでしょうが、自分から結婚問題として考えて行ったとき恋愛はないけれども、生活には安定しているのだからという点で、リアリスティックに判断した積りで、それを拒《こ》ばまない気持というのは現代の半分自覚して半分自覚せず、その自覚しない半面では強く現実の中の打算に負けている女の心の動きかたを語っていると思います。
 何時ぞや映画の若い女優さんの座談会があって、そこでは吉屋信子さんが司会していらしたのですが、若し好きな人が出来て、その人が貧乏だったらどうするでしょうと云う話が出ました。すると一人の活溌に話している女優さんが、「あたしは始から、そんな人好きにならないわ」と至極明快に断言しているのです。すると吉屋女史が、「ほんとうにお金の無い人との結婚はするものじゃありませんよ」というような意味のことを云っておられました。その応待を読
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