ことは良かれ悪しかれ欧羅巴《ヨーロッパ》の社会の中で育っている男女とは、気持の出来具合の上で、随分違いがあるでしょう。
アパート生活と一人の女の人の生活とは結びつけられるものだが、そのアパートの一|室《しつ》一室に棲んでいる人が、どんな気持で住んでいるかと云えば不知不識《しらずしらず》のうち、今のアパート暮しは一時的なものという気持、結婚するまでとか、又、結婚している人は、子供が生れるまでとか、そう云う気持が一|室《へや》一室の壁をとおして滲み出ているでしょう。その気分と、始めて一人になって暮して見る若い女の人たちの中にある家恋しさの気持(それはいろいろな複雑な形で出てくると思うが)が結びついて、矢張り何かアパートの一室の中で営まれる自分の生活の中に、永続的な見透しや、確信をもっていないでしょう。
女の人がひとりになると自堕落になるとか、いろいろの誘惑が危険であるというのは、外部との結びつき方を、受身に見て云うことで、その人々の心持ちを主にして、その側から見れば、その気持の中に、自堕落にさせたり、ちょっとした好奇心や誘いかけにもろくなっている様な独立的でない感情があるからではないで
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