たちの生活に問題があることを肯定してリアルに語る言葉にふれてみたいという願望からであると思われる。
女性の書く本と、それを読む心理にこういう今日の生活の現実に立つ動機があるものだから、ごく最近では男のひとで、婦人の職業や結婚の問題を扱った本を出すひともあらわれて来た。
医術では、女のお医者より男のお医者の方がたよりになる気がする場合もあるというのが今日の私たちの正直な実感だけれど、女性の生活に即したことを語る本で、女の著書より肩書きのある男の著書の方が立派そうに思えるという時代は過ぎているであろう。今日の女性はもっと自分たちの生活の現実から本を読むし、漫然とした感想風な著作にあき足りないひとは、そこに専門的な精密さをもとめて、例えば谷野せつ氏の最近の女子労務者の生活調査を扱ったパンフレットなどをも深い関心で見ていると思う。
それがどういう事情からにせよ現在のように女性が出版の可能を割合もっているとき、女性はあらゆる種目と範囲に亙ってたくさんの本を出して行くべきだろう。質を縦にもふかめて、専門的な、時間の経過に耐える労作を、もっともっと生み出して行っていいと思う。
女性の勤労がひ
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