ろまり高まるにつれて、文化の面でも女性の動きが現れるのは自然だけれども、その勤労が女性の歴史の成長にとってただの消耗であってはならないように、女性の書く本が目の先の過ぎゆく文化的泡沫であったりしては悲しいと思う。
もしこれ迄がインフレ出版であったというならば、それとして、その現実のなかで一番新鮮で肥沃で誠意もこもった成長の可能をもつ部分の一つが女性の著作の分野であっていいだろう。特別な本つくりめいた一部の文筆家をのぞいて、日本の女性一般はまだ本を書くことにすれていない。下らない本にも、その人としての最大の努力が傾けられている。そこに、最低の水準が次第に育ちのびようとする無視出来ない力がひそめられているのだと思われる。[#地付き]〔一九四一年九月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:「東京堂月報」
1941(昭和16)年9月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月2
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