女の歴史
――そこにある判断と責任の姿――
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)一語《ひとこと》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)自分にはっきり、よさ[#「よさ」に傍点]を感じる
−−
数人の若い女のひとたちが円く座って喋っている。いろんな話の末、映画のことになって、ひとりの人に、あなたは誰がお好き? ときいた。そのひとは房々と長く美しく波うたせてある髪を瀟洒な鼠色スーツの肩で一寸揺って、さあ、と口ごもっている。きまりわるいのかしらと思って、私は自分からロゼエの名などあげて、あなたは? ともう一遍云ったら、そのひとはいかにも生活から遠くのことでも云っている調子で、その映画のなかでさえよかったらそれでいいんじゃないでしょうか、と感情のない声で答えた。
あら、だって、その映画のなかでよければ、やっぱり好きとも云えるのじゃないの。勿論、映画の中でのことよ、好きと云ったってきらいと云ったって。
そのひとはまた美しい髪をゆするようにして軽い笑を口辺に浮べて黙っている。
偶然話の合間に云われた一語《ひとこと》に執しても
次へ
全16ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング