女の行進
宮本百合子

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 十一月のお祭りのうちのある午後、用事で銀座へ出かけていたうちの者が、帰って来て、きょうは珍しいものを見たの、といった。浦和の方から、女子青年の娘さんたちが久留米絣の揃いの服装、もんぺに鉢巻姿で自転車にのって銀座どおりを行進して行ったのだそうだ。それは綺麗だったけれど、そのあとから制服の背中に黄色い布で長い木剣を斜に背負って自転車にのった娘さんの一隊がきかかると、立ち止って見ていた通行人たちはびっくりした心持からユーモアへ動かされて、みんな笑い出したそうだ。あんな恰好をして遠いところからペタルをふんで来て何の意味もないじゃあないか、という批評がきこえたそうだ。うちの若い娘も不思議そうに、木剣背負ってどうするんでしょうね、剣道をやっているのかしら、といっていた。
 その場にいあわせたのではなかったから、行進があたりに与えた空気も、それと反対に行進を見送ったその時の通行人の気分も、それがどんなものであったか、もとよりは
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