女の学校
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年十一月〕
−−
女学校しか出ていない日本の女性に、「学生生活」の思い出というようなものがあるだろうか。女学校というところは、中学校とさえもちがって、いかにも只少女時代という大ざっぱな思い出の中にくり入れられてしまうような気がする。卒業してからの生活も、私たちの時代の娘たちはみんな夫々親の選択による結婚で、すっかり事情がちがってしまうから、友情さえも永くもち越される場合が少いように思える。まして、同級生の中で、いくらか違った生きかたをしたものは、まるで別ものになって、たとえば私は、自分の卒業した女学校の会友名簿からは除名になるという名誉をになっているらしい。らしい、というのは、はっきりそういう通知さえよこさないから。
こういう一事でもわかるように、大正初頭の女学校の気風は、本当に保守的であったし、個性の特色をよろこばなかった。私の卒業した官立の女学校は、所謂品のよい、出来のよい画一にはめこまれていて、個性のつよさを愛さなかったから、
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング