るのも、重宝でしょう。この卓子の横に、蝶番で倒れる、火のし台をつける。
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冷蔵庫、野菜貯蔵箱などは、解り切った必要品で、置かれるべき場所も、云うほどのことはありませんでしょう。
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風呂場[#「風呂場」に傍点]は、私共にとって、決して、等閑に附せられないものです。せっせと集注して何かをし、一風呂あびようと云って、程よい湯に浸る位、心も体も、のびのびとする事はない。
思うように出来るとすれば誰でも、自分で加減が出来、いつでも入れる、様式を好みましょう。台所で使う湯と同じボイラーで沸し、白いタイルで張りつめた、明るい浴室の湯槽に、なみなみと一杯にする。
別に脱衣室と云うようなものはなくても、浴室の扉の内側に、衣服をかけて置き、洗流し式のW・C・も、洗面台も、皆此室にとりつける。
従って、従来のような、あまり台所のそばで、浴衣《バスローブ》や、寝衣のまま行かれないのでは困ります。
女中部屋[#「女中部屋」に傍点]は、これからは矢張り、椅子式でよろしいでしょう。さほど広くはなくても、快活な窓、必要だけの家具、女らしい壁紙などに囲まれていたら、心もさっぱり活々としますでしょう。
私の家では人数も少いので、食事でも皆同じにしている位ですから、女中の部屋と云っても、時には楽しくお喋りに行けるようにして置きたく思います。
此で、まあ必要な部屋の種類はあげたことになります。
寝室つき書斎二つ、各々十畳に四畳半位ずつ。客間、十三四畳。食堂、十一二畳、配膳室三畳。台所、六畳位。浴室、五畳。女中部屋六七畳。総体で幾坪になりますか。出来るなら、簡素なハーフ・ティンバーの平屋にし、冬は家中を暖める丈の、暖房装置が欲しゅうございます。
道路と庭との境は、低い常盤木の生垣とし、芝生の、こんもり樹木の繁った小径を、やや奥に引込んだ住居まで歩けたら、どんなに心持がよいでしょう。
余り市中から遠くない半郊外で、相当に展望もあり、本でも読める樹蔭があると同時に、小さい野菜畑や、鶏でも飼う裏庭《ヤード》があったら、田園生活のすきな自分は如何程よろこぶでしょう。
けれども、斯うやって、電車の音のする、古い八畳で、此を書いている以上、今までのすべては、全く私の理想だけであり、或は、空想だけで終るかもしれません。
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