まってしまうような大椅子、長椅子があり、気持のよい出窓の下の作りつけ腰掛。ヴェランダ。片隅の便利な茶卓子《ティーテーブル》。床の上には色の凝ったカーペット二つ三つ。
 入った時、改って体が真直になるような感じでなく吻っと安らかになり、先ずぽっくりと腰を下ろして、呑気に雑談でも出来るようにありたく思います。

 食堂[#「食堂」に傍点]との境は、左右に開く木扉で区切っても、単に大きい帳を用《つか》ってもよいでしょう。
 此処にこそ、朝から、朗らかな日が流れ入って欲しく思います。円い五六人坐れる卓子、高くなく下った家庭的なダイニングルーム・ランプ。綺麗な花。軽快な小枝模様でもさっぱりと出した壁の前には、単純で、細工は確かなカップボールド、サービング・チェスト。
 台所[#「台所」に傍点]との間には、どんなに小さくても配膳室[#「配膳室」に傍点]があった方がよろしいでしょう。給仕をするのに、一々、大きな扉の開閉をせず、配膳室との境に、適当な大きさのハッチをつけ、台所で料理出来たものは、彼方側から其処の棚にのせ、給仕人が、此方から、部屋を出ず食卓に運ぶ。
 とかく五月蠅い人の出入りは、食事中なる丈さけたいと思います。
 配膳室には、食器棚、料理の仕上げをする位の意味で瓦斯、周囲の壁は、タイルででも張った流し。壁も天井も全部白く、出来るなら、細かい金属製ネットを張った大窓。蠅などが、成たけ入らないように、安心して食物を並べて置かれることが必要でしょう。台所と此処とは、夜一番明るく電気をつける事が大切です。外の部屋は落付きとか感興とかで、却って、隅々のほの暗いことも、或る時は快よいでしょうが、昔の日本の台所のように茶の間からの余光でさぐりさぐり流元をするようでは恐ろしい。

 台所[#「台所」に傍点]は、すべての婦人の問題となっている丈、近頃は、随分、健康に、便利に考えられて来たと思います。私などは、名案も持っていまいと思います。
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第一、無駄でない程度に面積に余裕のあること。
第二、立ったまま、洗物も、調理も出来ること。
第三、窓を多く、壁、天井は真白で、充分の燈火を持つこと。
第四、大きい卓子を置き、傍に瓦斯ストーブ、コンロ、アメリカ辺でやっているように、平常は調理台に使う卓子の、上板をはねると、洗濯桶《ワッシングタブ》になってい
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