ていらっしゃいと、わたしどもが小学校でやられた時の通りに進むかと思っていると、ソヴェト同盟では、ちがう。先生はしずかに言葉をつづけ、
「もちろんそそうでこわしたのはわかっています。私はそれを信じていますよ。けれどもね、子供たち! あの破れたガラスは非常に厚いいいガラスで、特別地下室のために製造されたものだったんです、残念なことにそれがこわれた。
 わたしたちは新しいガラスを買わなければならないんですが、それは楽ではないんです。第一大変お金がかかる。それから、第二には、今ソヴェト同盟はみなさんの知っているとおり「五ヵ年計画」をやっています。モスクワに、いくつとなく新しい建物、工場が建って、そのどの建物にもガラスがどっさりいるんです。だからモスクワのガラスの生産力は、われわれの必要をやっと充しているので、一枚のああいう特別のガラスは今急に手に入らないのです。間にあわせに、わたし達はあすこへ普通のガラスを入れましょう。でもそれは薄いから、先よりもっとこわれ易いんです。どうぞみんなで気をつけて下さいね。地下室のガラスがこわれて雪や雨の水が入ると、家はひどくいたむんです。――わかりましたね?」

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