市民の生活と科学
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)軽《かろん》じられて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年六月〕
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 家庭で科学教育をどんな風にしてゆくかということや、科学についての知識を大衆の間にひろめ高めてゆくという文化上の大切なことがらも、現実の問題としては今日いろいろと複雑なものを含んでいるのではなかろうか。一般について云えば、従来日本の女の教育のしきたりでは科学が非常に軽《かろん》じられていた。そのために、そういう片手おちな教育をうけた若い婦人が妻となり母となった家庭のなかで、自然な面白い科学教育が行われようもなかったと云えると思う。それなら婦人の教育におけるそのような重大な欠陥を急速に補って行ったらば数年のうちには解決されそうに見えるが、現在の日本の教育の傾きは、果してその方面の輝やかしい展望を可能にする性質をもっているものだろうか。今日の男児の教育の方向について云えるこのことは、女の児の場合には一層深刻な作用をもっていはしまいか。
 キュリー夫人伝は日本でも昨今ベスト・セ
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