く同一ではあるまいか。
文化映画というものの大きい役割がここにも顧み期待される。音楽という芸術が、音響学の面から扱われて興味ふかい試みの一歩を示した東宝の文化映画のことや、つい先頃偶然みたドイツの「池中の秘密」ミュンヘン科学博物館の実写なども思い出される。この科学博物館の映画からも原理を形象的に啓蒙してゆく方法がいかに多様で自由で人間的で具体的であり得るかということを考えさせられた。
文学は今日、あながち源氏物語をかりないでも、世界文学の間に一つの明瞭な日本としての独自性をもって存在していると思う。各民族の文学は本質的にそのような存在性をもっている。科学の成果の普遍性は広大であって原理はあらゆる人類のもの、応用は各民族のものと云う風なところがあるように思える。科学の真の発展の動因は原理のうちにあるとすれば、日本の若い世代がその貢献によって人類の原理を一進させ得るときが持てるように、家庭での科学教育や科学性の普及が行われることを切望する心持になる。今日の旺盛なアダプタビリティにも増す独創或は創造の力を、日本の科学の将来に期待し得る一つの条件として、知育の意味も専門の人々の間に新たに考え直され具体化することを願う。[#地付き]〔一九四〇年六月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:「科学ペン」
1940(昭和15)年6月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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