な三十四五の婦人党員が説明した。
――御承知の通り我々のソヴェト文化はまだ極めて若いんですし、我々の参考とすべき経験というものが、先にない。すべて新しい。これは大変よいことだが、困難もあるんです。ここの第一の仕事は、ソヴェトの子供にどういう本を読ませるべきかという研究です。幼稚園・小学校で、どんなお話をきかせ、本をよませ、四十箇所もある子供の図書館はどんな本を買うべきかここが中心になって研究し、決定するんです。
彼女は日本女を本棚の方へ案内しながら云った。
――今ここにいる女の人たちは大抵小学校の先生たちですよ。地方からも出て来て研究して行きます。
特別な本棚が一つ傍にあった。赤、黄、緑、紫、黒の紙片をはりつけた子供の為の本が棚わきに並べてある。それは毎週一度ずつ開かれる詮衡委員会が新刊児童文学につけた成績表である。
――赤いのが一番いい部です。紫、黒のになると他の図書館へは買いません。緑のは、私共自身にはっきりわからないのです。果して子供が面白がるか、理解するか、若しかすると私共はよくないと思っても、子供自身が何か発見するかもしれませんからね、一応与えて見るんです。
――
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