が、のりかけた舟、しかたがないと身がまえする。※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]は「コッ」と掛声をして飛び上って顔をつっつこうとする。手をのばして「ドン」と向うにとばしてやる。バサバサと羽ばたきして足にかかって来る。「ドッコイ」と身をかわして「ウン」とおす。後にまわった、又、オシとばす。又前にまわる。身をよけたので※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]は前のかきねにぶつかって「ココッ」と叫んで又こりもなく向って来た。わきにあった棒切をひろって死物狂にふりまわす。始めこそ面白半ぶんにからかって居たからこそ、ほんとになっては面白いどころのさわぎではない。顔をまっかにしてたたかう。敵はますます勢がよくついてくる。こっちはますますおじけづいて思うように手も出ない。だんだん垣根の方においつめられてとうていかなわなくなったから敵のすきを見てにげるに越した事はないと思って力まかせに棒をふりまわして置いて一生懸命に逃げ出した。ごんぺいじいの家から祖母の家まではあぜ道を五十歩ぐらい走れば行かれる所である。内の地内に住んで居るから、もうすこしで椽側につこうとした時急に敵が人の足をつついた。私は
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