1−93−66]をからかって遊んで居た。其の日もたいくつまぎれに池に出て岸の白スミレをさがしたが前の日にみんなつんでしまったので影も形もない。ぼんやりして空とにらめっくらして居たがごんぺいじいのにわとりを思い出してじいの家に出かけて行った。※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]はいつものように長いくびをのばしたりちぢめたりしてかたいごみの多い土面をツッツいて居る。ごんぺい夫婦は草かりにでも行ったと見えて家の中はひっそりして居る。※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]の奴さんは私の来たのを一向にごぞんじなくってツンとすましてござる。息をこらして麻裏草履をつま立てて後にまわる。奴さんはまだ気がつかない。一足、又一足、敵との距離は三尺許になった。手をのばすより早く長い尾の毛を一寸引っぱろうとしたがまて、昔の武士は人の部屋に入るにさえもせきばらいしたと云うのにいくら世がかわってもあんまりずるすぎるだろうと「エヘン」と云って毛を引っぱる。敵は「コッ」とさけんで飛び上ってこっちに向って来た。いつもコッコッと云って逃げるのに今日は少し風向が狂った□[#「□」に「(一字不明)」の注記]と思った
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