集団農場《コルホーズ》へ入ると、赤坊もやっぱり牛みたいに共有されるって本当かね?」
ドッと云う満場の笑い。「なおいいじゃねえか!」と云う声がした。又それで笑う。
――ソラ! 諸君はそうやって笑う。だがそれは一部に今なお信ずべからざる事実としてある事実なんだ。又ある村では一致して集団農場に入ることを拒絶した。何故か? 集団農場に入ると女はみんな髪を切らなけりゃならず、夜は大きな大きな一枚の布団があって皆がその下へ入って寝なけりゃならないんだと坊主が話した。それで不幸な農村婦人はすっかりびっくりしちゃった。
聴衆は手を叩く……笑う。笑う。
――諸君! しかし、農村におけるこんな反革命分子の跋扈《ばっこ》および無智は放置すべきだろうか? タワーリシチ! 農村は右傾派がそれを理解したように都会によって搾取さるべき植民地ではない。都会の工業生産と断然結合すべき、社会主義的生産に欠くべからざる工業原料生産の核心なのだ。
拍手! 熱心な拍手。もう聴衆は一人も笑っていない。
日本女は心に一種のおどろきを感じつつあたりの顔々を眺めまわした。どうだ、この気の揃いようは! 演壇に吸いよせられ非常
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