数学者ソーニャ・コ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]レフスカヤのストックホルム大学教授としての生涯は、この年代にすでにその早く終った生涯の晩年に近づきつつあった。
 さて、ここに、紫色の表紙をもった第三の「女大学」が私たちの目前に登場して来る。福沢諭吉の「新女大学」が出てからの日本の社会は今日まで実に大股に歩いて来た。四十余年の歴史の襞の間にはおびただしい波瀾がくるまれているのだが、第三の「女大学」は、どのような女の歴史をその内容にてりかえしているだろう。
 まず昭和十三年に出版されているこの「新女大学」には、良人読本という一部が加えられている。菊池寛氏は、日本の男子がもっと一般に婦人尊重の習慣をもたなければならないこと、妻に貞操を求めるならばそれと同様に自身も妻に対する貞潔を保つべきこと、一旦結婚したら決して離婚すべからざること、それらを、こまかく具体的に、例えば月給は全部妻にわたすことが、良人の貞潔を保つ一つの条件であるということにまでふれている。男は、自分より生活力も弱い婦人を、婦人一般として、その人への自分の好悪にかかわらずていねいに扱うところまで高められなければならないと
前へ 次へ
全15ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング