発として、歴史的なものであった。原始の女性は太陽であった。婦人の自由は社会生活の全面に確保されなければならないという主張であったけれども、当時の社会、経済生活は婦人にその主張の土台となる経済力を与えていなかった。いわば親がかりで気焔をあげているところがあった。母権時代は、現実の上には遠く遙かに過ぎ去っているのであったから、そういう主張をした婦人たち自身の恋愛や結婚にしろ、わずかに当事者たちの選択の自由、自主性、を示し得たに止った。そしてその女性たちの選択の自主性が、はたしてどれだけ人間的に社会的に高められ、進んだものであったかということについては、若い世代は、彼女たちの時代的経験に敬意を払うとともに、大なる疑問をのこしているのである。
 白樺派を主とする人道主義の人々は、出生した環境、階級の関係から、旧来の男尊女卑に反撥して、男と女との結合につよく人間性を求めた。殿様の切りすて御免風な女に対する関係を否定したのであった。恋愛において、結婚生活において、形式から縛られた貞潔ではなしに、自発的な自身の愛情に対する責任としての貞潔を、自身にも婦人にも求めた。人間として完成する伴侶としての男と
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