女との結合ということがこの時代には眼目とされたのであった。
確かに白樺派に属する若い人々は、まじめに、軽蔑など感ぜず女に対し、たとえば小間使いの女との間に生じた関係をも全心的に経験したであろう。女を一人の女として、階級のゆえんで蹂躙したりは決してしなかったであろうが、概して、これらの若い人道主義者たちの人間性とそれに対する善意とは抽象的なものであった。これらの人々は、どんなに自分は善意をもっており、誠実な心であっても、客観的にそれが現実の社会関係の内に行動されたときどういう作用を起すかということについては比較的知っていない。その点での社会性はいたくおくれている。これは直接恋愛についてではないが、たとえば武者小路実篤氏が今日の時代の農村の実状からとびはなれて、二宮尊徳をその誠意や精励、慧智の故にだけ、その美徳を抽象して賛歎しているような悲しき滑稽が出現するのである。
欧州の大戦と婦人の職業戦線の拡大、労資の問題の擡頭、民衆の階級としての自覚、その解放のための運動は、日本でも恋愛と結婚との実際に大きい影響と変化とを与えた。ソヴェト連邦は新しい社会の機構によって、婦人の性を妻、母として保
前へ
次へ
全30ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング