護しつつ、社会的にますます人間性の高められた複合単位として経済的、政治的、文化的に男女一対の内容を育てつつある事実は、世界の進歩的な男女に、男と女との恋愛や結婚の幸福の土台となっている社会事情についての理解やその歴史的発展に対する認識に一定の方向を与えた。マルクス主義の理解は、恋愛、結婚問題についての態度を従来の女性解放論的なもの、あるいは男女平等論風なものとはその本質において異ったものとした。抽象的に恋愛における人格の価値や自由をとりあげていた過去の態度に対して、新しい常識は、われわれの恋愛の根底において支配している経済力と個人との関係、そこから生じる恋愛の階級的質の相違、恋愛の自然な開花の可能と社会事情の進展との相互関係などについて、積極的に会得するようになったのであった。
 当時、おびただしい困難と歴史性からの制約と闘いながら、社会進歩のために献身した若いマルクス主義者たちの実践は、方向としては健全で遠大な目標を目ざしつつ、日常の錯雑した現実関係のうちで、実にさまざまの価値ある経験の蓄積をのこしている。どんな思想も抽象的に在ることはないのであるから、当時の最も進歩的なものも、日本
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