ちが進歩的であればあるほど、多くの困難にであわなければなるまいと思う。とくに、総領の息子、あるいは家督をとる一人の娘というような場合、これらの誕生の不幸な偶然にめぐり合った人々は、今もって家のために、親を養い、その満足のために、結婚がとりきめられ、そこでは家の格式だの村々での習慣だの親類の絆だのというものが、二重三重に若い男女の心の上に折り重ってかかってくる。
 農村での生活がたち行く家庭で若い人々の負う荷はそのような形だが、貧農の娘や息子の青春は、どんな目にふみにじられていることであろう。政府は東北局というものを新しくつくらなければならない程度に、日本の農村は貧困化している。売られて都会に来る娘の数は年を追うて増加して来ている。矯風会の廃娼運動は、娘が娼妓に売られて来る根源の社会悪を殲滅し得ない。
 小さい自作農の息子が分家をするだけの経済力がないために結婚難に陥っていること、またそういうところの若い娘たちが、また別の同じような農家へいわば一個の労働力として嫁にもらわれ、生涯つらい野良仕事をしなければならないことを厭って、なるたけ附近の町かたに嫁ぎたがる心持。ある座談会で杉山平助氏は
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