逆行は本然的に不可能であると感じており、しかも一方にはますます逼迫する経済事情、自由な空気の欠乏などが顕著であり、生活態度全般にわたって帰趨に迷うとともに、恋愛、結婚の問題についても、決して、簡単明瞭な一本の道には立っていないのが今日の現実であろうと思う。優秀な、着実な今日の若い人々は、決して、反動家のように野蛮な楽天家でもなく、卑屈な脱落者のように卑屈でもあり得ないのである。

 私たちは、自分たちが生活している環境も無視して恋愛も結婚も語ることができない以上、農村の若い男女の実際と、都会の若い勤労者の間でのこととでは、いろいろ違ってくると思う。
 現代の社会の機構が、都会と農村との生活的距離を大にしており、文化の面で、地方は常に都会からおくれなければならない関係におかれている。哲学者三木清氏は、この原因を地方的文化の確立がないから、都会の文化がおくれて、しかも低い形で真似られているにがにがしさと見ていられるが、近代の農村と都会とをつないでいる経済関係を知っているものは、文化の根底をもおのずから、経済的なものと観ざるを得ない。地方の小都会や農村の若い人々の恋愛や結婚の実際は、その人た
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