して卑屈でない女の真情が溢れたぎっているのである。
オオドゥウが人生の苦悩に対してひねくれず毅然としたものをもっているところが、彼女をありふれた女の悲劇から救い、このような美をもつ作品をも書かせている。
読者の中に、もしか「あしながおじさん」という岩波文庫から出されている小説を読んだ方がありはしないだろうか。
「あしながおじさん」は有名なアメリカのユーモア作家マーク・トウェンの姪、アリス・ウエブスター(一八七六年―一九一六年)によって書かれ、やはり孤児院で育った娘ジャーシャの物語である。ジャーシャは「快活で、率直で、機智にとみ、人生に対して楽天的で、しかも独立心にもゆる魅力ある近代女性」として読者に愛せられる娘である。が、作者は、ジャーシャを孤児の境遇から幸福で富裕な近代若夫人に育て上げるために「あしながおじさん」というほとんどロマンティックな青年貴族をもち出している。その広大な財力による庇護の腕の中でジャーシャの独立心も可愛らしく書かれている。
「孤児マリイ」とこのジャーシャを読みくらべてみると、ウエブスターのように不幸の解決が慈善でできると信じていた社会層の婦人作家の世の中の見
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