、また家族の生活そのものの中で女はどういう位置を占め、今日までの歴史を生きつづけて来ているのであろうか。昨今は、日本の女と家庭の結びつき、母としての女が女の最上の生き方であるという考えかたが強められて来ている。だけれども、一方では新聞で見てもわかるとおり、若い女が戦時の必要のために工場へ出て働いている数はおびただしいものになって来ているし、女の生理に害があるといって禁止されていた女の鉱山の地下労働へも女がまた今は入ることになって来ている。経済の事情が入りくんで来るにつれて、親子、夫婦、兄妹の家族内の関係もいろいろと複雑になって来ていて、私たちが真に人間らしい心持で、家族の生活を守り、高め、美しいものにしてゆくためには、今日ただ自分ひとりの気の持ちようだけでは屡々《しばしば》破綻する現実の事情におかれている。女と生れたからには、女として十分花咲き、実をも結んだ生涯をどんなに私たちは望んでいるだろう。女に生れて残念だということが、いわばしっかりした女のひとの口からもれるような世の中であってはならない。しかもそういう実際があるとすれば若い女の世代は狡くそれから自分一人だけの身をかわしてしまわ
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