の子供の生きかたを見まもるような表情をもっているおとな。
そして、心からごく若い男――少年、ごく若い婦人たち――少女を、人間的自覚のあかつきの面を向けている大切な美しい時期の人たちとして理解をもっているおとなたち。そういうおとなの人間が日本の中に一人でも多く形成されてゆくことを、きょうのおとな自身がどれほど希っていることだろう。
ある意味で、いまのおとなにあきたりない苦しさとたたかっている若い人たちの悩みの本質は、そっくりそのまま、そう狭くない範囲でおとな[#「おとな」に傍点]自身のたたかっているなやみでもあるというのが、いまの現実のありようである。人間としての悩みは、成長のそれぞれの時期にちがった形をとってあらわれる。
けれども、そのさまざまな形を通じて、一貫した「人間の問題」として、わかい人々の生活は、年齢をこして、人間らしくあろうと欲しているすべての年代の人々に通じているのである。
十代の若いひとが、人生にめざめそめて、朝霧がいつかはれてゆくように自分の育って来た環境を自覚しはじめたとき。人間としての自我が覚醒しはじめて、自分を育て来ていまも周囲をとりかこんでいる社会と
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