若い世代のための日本古典研究
――『清少納言とその文学』(関みさを著)――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)憾《うらみ》も

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)故実|穿鑿《せんさく》の態度で
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 国文学というものは、云わばこれから本当の生きた研究がされるのではないだろうか。旧来の国文学は専門家の間にどこまでも鑑賞、故実|穿鑿《せんさく》の態度で持ち来されていて、推移する文化の科学的な足どりとは自身の研究の方法を一致させていなかった。そのためにこの三四年来、文学以外の領野からの力で日本古典文学への関心が高められはじめたとき、学問としての客観的な態度で而も古典の正しい評価を教える専門家も乏しかったし、一般読書人も古典への判断の根柢は薄弱である伝統から、非文学的な扱いに歪められた紹介だの評価だのに煩わされ支配された憾《うらみ》もあった。
 関みさを氏の『清少納言とその文学』は、若い世代の古典への常識のための手びきという明瞭な立場をもって書かれていて、その目的のためには実に親切に整理されている本だと思う。この一冊の本を精読すれば
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