という若い婦人闘士は、ほんとうに大泉が共産主義者であり党の中央委員であると信じて、そのいうことを信頼して活動をたすけ、献身して人民解放のために努力しているつもりであった。ところが、大泉が本職のスパイであることが発見された時、熊沢みつ子は非常に苦しんだ。自分の人間的な善意が裏切られたことに苦しみつくして、とうとう獄中で自殺した。だが大泉は平気で生きている。こういう非人間的な行動を逆に共産主義者へのそしりとして、ハウスキーパー制度というものがあった、というようにいっている。
同志の間に愛情問題が起り、結婚生活にも入ることがあるのは自然だし、これからもあることであるが、しかし、その結合を破壊し、おどかし、ちりぢりにさせたのも治安維持法であった。婦人の社会的活動の面が拡がるにつれて、社会認識の上でつながりのない結婚はますます減ってゆく。そこに共通な社会的地盤の上に立つ男女の純潔さがあり愛情の純潔さえも一層強固に保たれてゆく可能があると思う。
愛するものがあってもなくても、人間一人として、一人の女として、また一人の男として、どういう生き方をつらぬきたいと願っているか。その願いで結ばれて、互い
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