社会主義リアリズムの問題について
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鍛冶屋派《クウズニッツア》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三三年十一月〕
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 第一次五ヵ年計画のおおうべくもない達成、ひきつづき発表された第二次五ヵ年計画の基本的方針とともに、ソヴェト同盟がプロレタリア文学運動の領域において、社会主義的リアリズムの問題を国際的に提起したことはわれわれにとって実に興味あることです。
 ソヴェト同盟で、プロレタリア文学の創作方法におけるこの問題が起った社会的根拠は、第一次五ヵ年計画の成果によってプロレタリア文学運動の分野にあっても、他の生産部門においてと同様、多数の新しい労働者、集団農場員幹部をもつようになったこと、労農文学通信員からおびただしい新進作家が輩出して来たこと、及び、スターリンが演説の中でもいっている通り、旧インテリゲンチア、作家団でいえば「鍛冶屋派《クウズニッツア》」や「同伴者《パプツチキ》」たちが、現実の社会主義建設の生活からの教訓によって、プロレタリアートの側に集団として移って来たことなどにあります。マクシム・ゴーリキイが六十余歳の老齢をもって、去年の革命第十五周年記念祭の時党員となった事実は、私どもの記憶に新たな感銘として印されている。
 ところで、これらのプロレタリア新進作家や旧インテリゲンチア作家たちは、それぞれ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致していても、必ずしも皆が皆いわゆる卓抜なるマルキシストではないわけです。
 ソヴェト同盟の指導者たちは、生産・政治・文化建設の面におけるプロレタリアートの勝利の確立とともに、ほうはいと高まった大衆のうちのプロレタリア化の可能性=文学においてはプロレタリア文学創造のより豊富な可能性を、十分指導し、開花させるために、すでに従来の組織ではこの必要を充足し得なくなった「ラップ」の発展的解消を提唱し、創作方法のスローガンとして社会主義的リアリズムをかかげ、広汎に強力に、いきいきと、すべての作家よ、めいめいの実践をとおして「社会主義建設を描け」と云っているわけです。
 以上の簡単な説明でも明らかなとお
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