り、この「社会主義リアリズム」の問題は、プロレタリアートの階級性の抹殺の上に立てられているものではなく、ソヴェト同盟の指導者たちが、一九二一年の新経済政策以来プロレタリア文学運動を国際的規模において発展せしめて来た一貫した指導方針=文学の面におけるプロレタリアートの主導性の確立の一つの現実的形態として表れている問題です。「創作方法における唯物弁証法」のスローガンの社会的実践によって導き出されて来た新しい労働者農民作家群の輩出、社会主義建設がすすむにつれて顕著なインテリゲンチア作家の階級的移行、有能な新幹部の多種多彩な文学的活動と、より広汎な人民層のプロレタリア化の可能性を、より高い見地からマルクス・レーニン主義的に発展実現させるために、過去数年間の成果と欠陥とが大胆率直に批判され、一歩の前進へ立ち向ったわけです。
 国際的なプロレタリア文学運動にとっても、ソヴェト同盟によって提起された社会主義的リアリズムの問題は実に重大、かつ深刻な意義をもちます。多くの国がそれぞれ具体的な情勢の下で多数の人々をプロレタリア文学の旗のもとに結集させるために、きわめて含蓄にとんだ指導的な示唆を含んでいるからです。
 日本において、階級対立は激化しつつある。プロレタリアとして十分自覚を持たずプロレタリアの革命を知らない労農大衆でさえ急進的なインテリゲンチア、小市民を含んで、自然発生的に搾取と横暴に反抗しつつある。その度はますます高まるでしょう。このような社会的条件のもとにいよいよ広汎に生れるまだプロレタリア的とはいえないが急進的革命的傾向をもち、その方向へ発展する要素と要求をもつ文学活動家に、より明確に現実を把握させ、掘り下げる方法を獲得させプロレタリア革命の現実的根拠の見透しにたって、その組織と創造活動を高めてゆくためには、具体的に、大衆活動の中でプロレタリアートの主導性の貫徹が、されなければならない。ここに、社会主義的リアリズムの問題がわれわれの過去の活動の再検討を召致した契機が存在すると思います。
「ラップ」の発展的解消、単一なソヴェト作家同盟組織委員会の結成、および創作方法における社会主義的リアリズムの問題の提起は、一部の人々によって誤解されているように、インテリゲンチアへの追随でもなく、抽象化され超階級化された技術偏重論でもない。ましてや階級性、革命性を抹殺した卑俗現実主義の大
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