すべての今日の問題をひっくるめて、明日の可能性をその中から発見し、それを実現するように実行しながらすすんでゆくものです。
 たとえば、人間性の発展としてあらわれる才能というものについてみても、現在の社会では、才能が多くの場合、偶然によって発見されて来ています。ソヴェトの各工場にはみな文化サークルがあって、シーモノフなども工場のサークルから送られた作家です。舞踊でも、オペラでも、文学でも、あらゆることが、文化サークルの中にあって、そこで、この人たちの好きな、やりたいことをやっているうちに才能が成長し、発見され、みんなが助け合って地区の文化サークルのコンクールに当選する、さらに地方のコンクールに当選して、そういう人ならば、とアカデミーまで勉強にゆく可能が出来る。個人的な、一人でも競争者をけおとさなければならない、アナーキスティックな競争心は必要ない条件があります。本当によい労働者、そして本当にいい歌い手であれば、あの男の歌ならみんなが聴いて喜ぶ、あの人をわれらの歌い手にしようじゃないかと、だんだん上のコンクールへ出したり、勉強させて、アカデミーまで送り出すのです。こういう可能が、社会条件の
前へ 次へ
全22ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング