どうかということで、真理は全くその歴史的・人間的関係をかえます。何故なら神をつくったのは人間であり、真理として自然の法則を人間の生活の中に把握したのは人間でありますから。人間はまだ当分の間は階級的な存在ですから。
七
婦人の科学技術者が本当に世界的な水準に一致した自身の技術をもち、社会がそれを偏見なしに信頼活用するという時代は、まだきていないのではないでしょうか。もっともその点で前進しているのは、社会機構そのものが社会主義化しているソヴェト同盟でしょう。この問題は、長年ブルジョア女性解放論者によっていわれてきたような、女性の主観的がんばりだけで達成されるものでもないし、戦時中の政府が戦争目的のために婦人技術者を養成して、いまはそれ等の人の中から売笑婦が出るような状態につきおとしているやり方でも解決しません。マダム・キュリーがあれだけの仕事をしたのには、いくつかの原因があります。しかし、基本的に科学そのものが一定段階まで進歩していたこと、当時フランスで婦人の参政権は与えられていなかったけれども、大革命を経たフランスの理性的な人々の心には、婦人の能力に対する偏見が
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