があります。インテリゲンチャには、とくにこのことが強く感じられるために、却って全体としての前進に躊躇する気分もあります。しかし、日本の歴史は、遅れているだけ二重にかさなった早い面があるのだから、わたしたちはそのことをよく理解しなければいけないと思います。
八
婦人がますます働く期間を長く必要としてきているという動かすことのできない経済的実情。これは、すべて明瞭だと思います。婦人が働くのは結婚までという使用者の考え方は、全く安い労働力の利用ということ以外にありません。働かす条件が悪くても、どうせまだ親がかりだなどといういいわけで、職場の設備の悪いことも、厚生施設のないことも、第二の問題のように扱います。
働く婦人自身が結婚までとピリオドをうつ気分には、働きそのものの発展性がないこと、独立的生計が営めないこと、めいめいが特殊の技術をもっていないことなどにからんで、ブルジョア婦人雑誌の封建的な現代では、エロティックな結婚病に対するまんせい的な刺戟の害毒があります。
こんにち、大多数の婦人は、結婚するにしろ経済的能力を失わないことが大切だと思っているし、そのために
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